先日と同じ著者、池田晶子さんの現代の哲学入門「人生のほんとう」をレビュー。
目次
- 常識 生と死について
- 社会 その虚構を見抜く
- 年齢 その味わい方
- 宗教 人生の意味
- 魂 自己性の謎
- 存在 人生とは何か
本書の全体像
「14歳からの哲学」と、内容は似たり寄ったり。こちらは講演を纏めたもので、むしろ前作のほうが読みやすいです。それでもこちらを手に取るメリットはなんなのか。
ひどい話ですが、それほどありません。例を改めてみたりはしていますが、内容があくまでも初心者向けのままというのもありますね。ただ、対象が大人であるので、もう少し世の中に踏み入っていることと、安易に希望を与えていないこと、現代のことを含めて、3割5分くらいが置き換わってるように感じられました。
原点、他はどうだか知らないが自分のことを考えている自分は間違いなくある、これさえ見失わなければ、全部すんなりと読めるはずです。僕は後半に違和感を覚えましたが。
残念に思えるところがあります。肝要な基本の部分とそれを他にどう当てはめて考えるか、これは丁寧なのですが、それ以後どうするか、は一切触れていないことです。それは自分で考えることなのですが、やはり非常に見失いやすい。もう一歩踏み入ってもらいたいところでした。とはいっても頷ける内容も多くあります。少し考えてみましょう。
運命は性格にあり、俗流亜流のつまらなさ
運命は決してどこからか与えられているのではなくて、その人の性格そのものですね、出来事そのものを見てみれば。だってその人の出来事は、すべてその人の出来事なんですから。
この存在の同語反復の不思議、謎に気がついて、この謎の側から見てみると、最近たくさん出ている続中ユング心理学などのつまらなさがよく見えてきます。本屋さんの棚にいわゆる精神世界というジャンルがあって、軽薄なハウツーものとか、人生こうすればああなるみたいなものがたくさん出ています。
上の二つはページを分けて、それぞれについて語られています。しかし見れば見るほど共通していますね。確かに性格が運命をつくります。以前の記事、「新年明けまして、僕の抱負。」でも書きましたが、やはりそれ以上ではないのです。注意してもらいたいことは、遠く離れた家族が交通事故にあった、とかそういう運命についてここではテーマにしていませんよ。自分が自分を導いていくときの話です。例はあげませんがそういうものですね。
それを踏まえたうえで、下の引用文、俗流亜流のつまらなさ、ですが、ハウツー本に頼る前に、自分でありったけ努力したのでしょうかね。何事も簡単に済ませられると思ったら大間違いです。そうしたいのであれば、個人の基本能力を高めて、人より早く理解する方法を体得する、とかの基本さえできれば、その後もついてくるもんです。そう思う僕は、ハウツー本は多分、関心を持たなかったことについて考えるきっかけで使うのが理想だと思うのです。くれぐれも頼り過ぎないように。
たとえばですが、最近、人間力がどうのこうの、だの、この前のメッセンジャーにログインしたときは、「いまどきのできる男は人間力じゃない、何々力だ、云々かんぬん」、なんて出ていましたが。そんなに簡単にできたら苦労しませんって(笑)。そうやって字面だけ追いかけていくと、本当にいつの時代でも通用する基本的な考えを見逃します。僕に言わせてもらえれば、職場のできる人間を目で追えばいい。自分の場合、できる男はなんなのか、だれなのか、自分は何ができていないのか、等等、自分で考えるべきです。こと日常的に目の当たりにすることですから、いちいち方法論を追っかけるのは甚だ馬鹿らしい。それが次の文章にかかわってきます。
「欲はかくな」といっても「欲は欠くな」
幸福は、現在において充たされてあることでしかないわけで、先々何かがほしいという欲望をもつこと自体で、人は現在に存在しなくなりますから、充たされることができなくなりますね。
これは僕の分野の関係もあって同意しかねます。聞いていると、哲学は科学の考えと対立させて表現することがありますが、欲望とか願望は、必要なものです。
この欲望、願望は、希望と異なり、そもそもがよくないこと。というのならばわかりますが、上記のニュアンスを見る限り、長期的なプランニングは現在において苦労を強いられ(未来に達成し)、充たされることがないと読み取れます。いい意味で子供的な、今に生きることを主とする考えですが、哲学から離れると、そうでないほうが得することがたくさんあります。打算的、ともいえますが、今なせないことをさまざまな思いで取り組むことで、最終的になせることもあります。なにも自分があり続ける現在を充たされて生き続ける必要はないんじゃないかな。
それもこれも僕の読解力不足なだけだったらいいのですが、これを直接考えると、「ゼニの幸福論」の青木雄二氏は、稼ぎおわったその瞬間から、まさにこれに該当してしまっているような気がします。しかし氏は本書のような考えを嫌う。ふむ、そうすると引用箇所は最終的な目標で、目標を追いかけている間はこの通りではない。それでも目標に到達できない人間もいるわけで、ムムムムム......
ということで、僕の思考はここで止まりました。しかし視界を広げると、なるほど、そうやって苦しんでいる人は大勢いますね。じゃあ、目標までの道のりも楽しめればいいんじゃないかな、むちゃくちゃなら無理せずに目標を下げればいいんじゃないかな。こうすれば後は簡単ですね。なんたってこの考えに沿うなら、楽しいも辛いも自分しだいなわけですから。だから結論は「欲はかくな」といっても「欲は欠くな」。
本書が合いそうな人
万人向け。大人の方がいいかもしれません。「14歳からの哲学」よりは、きっとしっくりくると思います。
それと最終章ですが、ずいぶんと身勝手なことを著者が言っていますが、背後の広範囲にわたる可能性を見ないと、ありえなく感じるのでご注意を。
