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書評:「ガイアの復讐」ジェームズ・ラブロック

http://libertatem.org/2008/07/book8-gaia.html

読み物として面白いと思った本は久しぶり。今回は環境と科学。

目次

序章
クリスピン・ティッケル卿
第一章:地球の現状
惑星専門の医師の立場から/前世紀の地球観/必要なのは持続可能な撤退/今使用すべき特効薬とは/ゴドーを待つ余裕はない
第二章:ガイアとは何か
生物も非生物も含めた統合システム/何故われわれは排尿するのか/自己調節する生物圏
ガイアはどのように機能するのか
調節の特性
第三章:ガイアの歴史
酸素の出現/地球の冷房メカニズム
ガイアの老化と死
第四章:二十一世紀の予測
気候変動の予測/北極やグリーンランドの解氷/エアロゾルの冷却作用/地質学的記録/ガイアに好ましい状態
第五章:さまざまなエネルギー源
化石燃料
水素
再生可能エネルギー
原子力エネルギー
エネルギー源のベストミックス
第六章:科学部質、食料、原料
農薬と除草剤
硝酸塩
酸性雨
危険物としての食物
リスクの認識
第七章:持続可能な撤退を意味する技術
改善
理想の食物とライフスタイル
第八章:環境保護主義に対する私見
直感的な感覚と本能/神と創造への直感的な理解/目標すべき適正人口は/人間はガイアの一部
第九章:限界を超えて
秩序正しい持続可能な撤退へ/文明の明かりを点し続けるために/われわれの子孫が生き残っていくためのマニュアル

一部改変

本書の全体像

最初速読で目を通したときはトンデモ本。読むのをやめようと思いました。しかし科学者の立場から見た地球保護は、読み進めるにつれて一貫性を得てきます。全280ページ。2006年初版。著者はジェームス・ラブロック、イギリスの方です。

地球環境の悪化は本当に切迫したものなのか、真の環境保護とはいったい何か、そういったものを環境モデルの結果と、エネルギーのシステムごとの無駄を交えて話を進めていきます。普段とは異なる切り口は極端な考えに聞こえるかもしれません。

本書ではエネルギーの主軸を原子力に頼る、という今日の世論から間違いなく反対される主張をしています。それでは本当に原子力は危ないのか。僕たちは知っているはずです、どう危ないのかは実際のところ映画や漫画の娯楽異常の知識を持ち合わせていないことに。ここは一つ、許容できるに足るだけの主義主張というものを知ってみたほうがいいのではないでしょうか。そこを確りとわきまえている84歳の著者は、何が極であるかの考えを知り、その対極も知る必要があるとしています。

書かれている内容は、著者の考えが前面に押し出されるあまり、珍しく科学者の割に定量的ではなく定性的であることと、推し進める原子力のデメリットを掘り下げていないことがあります。けれどもデメリットについてはいまさら語ることはないのかもしれません。

それでは、本書の魅力と所感などを2項目ほど。

何が原子力の被害者の範疇とされるのか

利権が絡んでいるあまり、今日においてこの前提を知ることはまずかないません。ですからここをどう捕らえるかは置いておくとして、本書ではチェルノブイリ原発事故では、直接的な死者数を75人と表記しています。これも裏づけあっての数字なのですが、それでも、ガンや奇形児は間違いなく増えているはずです。

面白いこととして、マスコミではレントゲンの被爆量何時間分などと換算することがあります。レントゲン100回分の被爆量は10ミリシーベルトなのですが、一体これでどれだけの寿命が縮まるのでしょうか。答えは4日です。さて、レントゲン1回が、一体何ミリ秒照射されるのかは考えずに、この結果からは皆さんの予想をはるかに下回ったのではないでしょうか。恒常的に摂取するタバコのほうがはるかに有害なのです。

たまたま原子力が目に見えないものとして人体に悪影響を及ぼす。死体の姿はおよそ人間の形とは思えない形状に変わる。このような本能的に慣れない現象が人の恐怖を必要以上に増強していやいないでしょうか?本書を読む前から思っていたのですが、現代の先進国ではガンをなによりも恐れます。技術的にそういった障害を乗り越えていく人間はすごいと思えますが、もう少しナチュラルに死を受け入れてもいいように思えます。一つの恐怖を乗り越えれば、太古に火を使おうと思ったときのように、リスクを正しく見積もって実用的に扱えるのではないでしょうか。技術のミスで死ぬのは、火事も被爆も変わらないことに気がついた上で話を進ませることが必要に思えます。

カオス数学から地球を考える

日本で教育を受けた人ならば、地球環境は相互的に支えられていることは言わずとも理解していることでしょう。相互関係があるということは一部の変化が全体に影響を及ぼすことです。

太平洋の海水はすんでいるイメージがあります。反対に北極などの海水は黒く沈んだ色です。あれは海水中に生物がいるかいないかの差です。太平洋の海がすんでいるのは、それが海の砂漠だからです。この海の砂漠は、同時に陸の砂漠と同様の大きな問題として考えるべきです。

さて、いま問題となっている二酸化炭素排出量。いや認知の正確さからすると温暖化でしょうか。この温暖化への対処として、太陽光を地表に到達する前に反射させるという手段があるのはご存知でしょうか。しかしこれには、前段での問題には対処できません。

海の砂漠は、海水の温度と二酸化炭素濃度の影響を強く受けます。二酸化炭素は過去に、海に沈める方向での解決を模索したこともあるのですが、この問題により中止せざるを得なくなりました。海の問題は間違いなく地上にフィードバックを起こすからです。このように、いまや問題は温暖化では留まらずにさまざまな事象が複合的に絡み合っています。何がどう、どの程度のフィードバックを起こすか、それはカオスのように誰も知ることができません。一つ言えることは、人間が介入した改善は必ずどこかでひずみが起きていることです。それを忘れてはいけません。

本書が合いそうな人

今回もまた、入門書として最適です。図がほとんど無いのにもかかわらず最後まで一気に読めるこの系統の本はそう多くはありません。中学生くらいから読める場合もあることでしょう。

また、読み物としても最適です。若干危機感の煽りが大げさなこともありますし、原子力推進派の意見もそうそう触れないために、十分に楽しめる内容でしょう。

ゲームに使えそうなネタ等

スポア!スポア!地球規模のゲームを作るにはこれはまさしくネタ帳です。あちらを立てればこちらが立たず、そういったシステムバランスには実に適当。

エネルギー源をどれに頼るかで、多種多様な特徴を持たせる資料として使えます。

また、地上でしか活動しないのに、実は海水のパラメータが影響を及ぼしていた!なんてノベルゲーム的などんでん返しが、笑えないくらいにその他のゲームにも実用的である事実をむざむざと突きつけられるのは爽快です。これいいかもしれません。

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2008年7月24日 10:30に投稿されたエントリーのページです。

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