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書評:「酸素のはなし─生物を育んできた期待の謎」三村芳和

http://libertatem.org/2008/08/book14-sanso.html

酸素のはなし。内容は無機科学3割、有機化学4割、歴史3割。

目次

序章
第一章:山に登るとどうして息が切れるのか
全力疾走する/エベレスト無酸素登頂/高所で暮らす
第二章:酸素がないところでどうやって生きるのか
酸素がないという意味/地下熱水中の細菌群/地球を襲った無酸素事件/酸素を回避する
第三章:酸素元素はどこからやってきたのか
酸素の長いた旅/酸素ガスを放出する/酸素の源─海水/炭素はめぐる
第四章:エネルギーをつくるのに酸素はどういう役割をするのか
酸素でエネルギーをつくる/ミトコンドリアは寄生者/食べてもやせる
第五章:低酸素をどうやって生き抜いたのか
陸だけが生物圏ではない/もっと酸素を/低酸素を感知する
第六章:酸素濃度はどう変わってきたのか
地球初期、ゼロから出発/一気に上昇する/パスツール点に到達循環する旅
第七章:酸素の毒性にどうやって対抗するのか
活性酸素と付き合う/どっと酸素がやってくる/活性酸素を味方につける/活性酸素に対抗する/活性酸素を使いこなす/ネズミチフス菌の抵抗
第八章:酸素は病気にどうかかわるのか
傷が治る/病気に潜む低酸素
第九章:限界を超えて
秩序正しい持続可能な撤退へ/文明の明かりを点し続けるために/われわれの子孫が生き残っていくためのマニュアル

一部改変

本書の全体像

酸素について、多角的に捕らえて話を進めていきます。若干荒削りなところがありますが、ほんのりと心地よい文体です。全228ページ。2007年12月20日初版。著者は三村芳和。

無機的なもの、化学式の話から、がん、医療などの生活にかかわる話、とにかく酸素全般が本書の守備範囲です。その中にももちろん難しい話もあり、読み手によっては苦労するのかもしれません。しかし、科学に関係するものは大なり小なり、理解に手間取るものも胸のすくような事実を学べることが多いので、慣れている人ならまったく問題のない難易度となっています。

本書のいいところは、著者が勤勉であることです。前述したとおり、さまざまなことが書かれているため、さながら酸素の集中講義。そして読み手の経験によって、興味の持てる部分が大きく異なることでしょう。僕はこれぞ『大人の科学』と押したくなる読み物だな、と感じました。大人になってからも科学に興味を持てる、これは間違いなく良書です。

以前、ジェームズ・ラブロックの「ガイアの復讐」を書評しましたが、こちらとあわせて読むと、環境保護の意識向上にも役立つ一品です。

それでは、「ガイアの復讐」とあわせた本書の所感。

今現在生きながらえている偶然

人は今まで長い間生きてきましたが、生きていくための地球上の環境は、実に気まぐれであることを思い知らされます。なぜなら、酸素は少しの差で振る舞いは変貌し、恐ろしいことに過去に何度もその量を変えているからです。

仮に酸素が増えたとします。環境の点では、森林火災の頻度が大幅に変わる、とデータが出ています。しかし、増えたときに人体に与える影響はなかなか耳にすることがありません。減少したときも同様です。本書は、温暖化などで環境が変化したときに、報道の背後でそれ以上の被害を生態系に与えていることを教えてくれます。

まだ手元にありませんが、本書で軽く触れられている『鉄理論』、こちらも読んでみたほうがよさそうです。環境は人の手で変えられる次元を超えていることを感じ、本当のエコロジーとは何なのか、も考えるきっかけになることは間違いないです。

「私の祖父はラクダに乗り、父もラクダに乗り、私はベンツに乗っている。息子はランド・ローバーに乗り、その息子もランド・ローバーに乗るだろうが、さらにその息子はラクダに乗るであろう」

シェイク・ラーシド・ビン・サイード・アル・マクトゥム(Sheikh Rashid bin Saeed Al Maktoum)の言葉より

本書が合いそうな人

大人の科学を学研以外から体感してみたい人。酸素、人体、生態系に興味がある人。

ゲームに使えそうなネタ等

本書全般ですが、得に僕が感じたのは、体内で白血球が病原菌を排除する詳しいプロセスです。ミクロなところで繰り広げられる戦いは、ゲームに置き換えて成功している例はいくつもあります。まだ枯れているようには思えないので、いい素材となるはずです。

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2008年8月31日 15:09に投稿されたエントリーのページです。

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