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2008年7月 2日

書評:「脳と意識の地形図 ビジュアル版」源書房

最近ご執心の脳シリーズ3回目。本書は前回のリタ・カーターの本よりも読み応えがあります。。

目次

  • 第一章意識は穴だらけ
  • 第二章やっかいな問題
  • 第三章ではなぜ意識を持っているのか
  • 第四章意識はこうして作られる
  • 第五章脳と意識
  • 第六章意識する体
  • 第七章私は私?
  • 第八章ばらばらになった意識
  • 第九章意識の宇宙?

本書の全体像

過去に書評した「脳と心の地形図 ビジュアル版」から4年たって発行された本書。内容は、意識はなんなのか、どのように作られているとされているか、意外な脳の働き等。全335ページ。リタ・カーターが著者。1page1分としても5時間以上かかります。

脳、脳とよく話題にのぼる今日、そもそも脳の働きとはいったい何なのでしょうか。実は観測するに当たって、常に主観を交えているものであります。そして主観を交えて話すとき、そこに「意識」を絶えず意識することとなります。果たしてこの意識、精神とはなんなのでしょうか。

本書では、この意識を、生存に当たって必要であった機能─敵から身を守る、食料を見つける─などをより高度化させた結果として考えていきます。なるほど、読み進めるとこれはこれで納得がいきます。

「脳と心の地形図」とは内容は大きく異なり、関連した内容は2割程度もありません。引用した事例が同じなくらいでしょうか。また、本書には悩みを解決させてくれるほど、結論のある話題を持っていません。読み終わったときは、確かにまえがきで書かれているとおり、わからないことだらけになります。

それでは、本書の魅力と所感などを2項目ほど。

クオリアって必要なの?

本書の広い範囲で書かれているので引用はしません。この問題なんですが、よく科学に傾倒している人にはこれ(クオリア)知っていて言っているの?という問いを聞きます。それではクオリアって何?その色を見たときに、たとえばそれが赤なら、赤であると認識する主観のこと、と記憶しています。ここで大事なのは主観だから個人個人に差があるということですね。

で、こんな問題に僕がどうこういったところで、馬鹿を丸出しにするだけなのですが、反対にネットで先ほどのように指摘して回る人も同じでないでしょうか。専門家でもなければ、先に証明ができないことを知っているが故に、さも全てを理解した気でいるような気がしますけどね。

本書を読んで感じたことは、やはりクオリアは生活では一切感じる機会がないことです。しかし、脳の機能的な問題から意識を考えたとき、人間関係でのほころびの一因となりえることは事実です。ですから現状、哲学のように意識をクオリアとともに考えるよりも、脳の機能的な問題が、生活にどのように影響を及ぼすかとともに意識を考えたほうがいいのでは無いでしょうか。

学術的なところまでいくと、未解決を解決とするためには、反論を許さないように完全なところまで持っていく必要があります。しかし、以前書いたように、事実に目を向けると、「確かに関係がある」いくつもの事象があります。例えば、赤を感じるということは、脳が必要と判断したからです。色をその名前とともに判断するための、カラースペースと呼ばれるこの色地図は、世界各地によって異なっています。それは、生きていくために必要か必要でないか、に影響されているようです。

それは言い換えれば、感じ方に些細な変化があろうとも、色を感じる必要があったためです。一般の紫に見えていたとしても、赤として感じる必要のある機能(夕日や血)と同様に働きます。結局のところ、主観がどう感じていても、言語で表すものに差がないのであれば、日常を過ごすのには問題はないものです。

主観の変化が他者から見て取れる場合

脳に何らかの変化があったとき、主観の変化が他者から見て取れることがあります。むしろ生きていく上で知る必要があることはこちらのほうです。

僕はごく身近な人が、脳手術で性格が変わったことに直面した経験があります。このとき、生きていくうえではやはり脳がその人である事実を認識しました。

その人は脳を腫瘍とともにいくらか摘出しました。それを医者は影響は少ないところだから問題はないだろうといっていました。確かに大手術だった割に、ほとんど後遺症がありません。しかし、身近であるために、些細な変化を知ることが容易でした。

当人はその変化がある最中は気がつきません。例えば以前より激情に流されやすくなったとしてもそれはやはり抑えることができず、後に残すのは後悔だけでした。

この本では、その意識が脳の損傷などで変化したときのいくつもの事例を挙げています。その人と今までの本と兼ねあった結果は次のような所感でした。

意識は意識的に変えることができます。意識とは多くの時間を作る無意識の間にあるもので、言い換えれば自己の存在する瞬間であり、その意識が働いているときには内省が許されます。これは僕が僕たる所以です。ただし、脳に傷を負うなどで意識に影響を及ぼしたとき、それは器質的に僕が失われたときに思えます。しかしそれでいて、僕は僕で生き続けます。

考えるに、子供のときの感覚ように、僕が生きているのはいま一瞬だけなのでしょう。ただ、脳は時間という概念を持ち、前後をつなぎ合わせていきます。ですから、脳がある限り次の瞬間にも僕はその性質を保ち続けますし、脳が怪我をしたときはその性質がすこし変わってしまうだけで、僕なんでしょうね。むしろ僕は今日も健全に自分が同じでいることに感謝でき、失われたときこそ当たり前のように思えます。あなたが生まれた奇跡というものは、行き続けている間も持続されているのではないでしょうか。

アルツハイマーにかかったとき、その脳死とも取れるプロセスが生きている間に多く行われていきます。変わっていくさまを悲しむのは客観であって、主観からするとゆっくりと意識が薄くなっていく、まさに若返りととれるような気がします。僕はそれが幸せなように思えます。

本書が合いそうな人

「脳と心の地形図」を読んだ上で、高校生以上であれば面白い事象から脳の機能を考えることは容易でしょう。しかし、意識に関連した章を理解することは、本書だけでは難しいように思えます。

小説なんかの題材に使えるのではないでしょうか。僕が気になったところは10以上はありました。

ゲームに使えそうなネタ等

いい加減僕のサイトを同人サイトに戻しましょう。論評とか書評ばっかりでそれこそ僕が失われています。と、いうことで、今度から読書しつつも、ゲームのネタを探すことにしました。

意識のスケールについての項目がいくつかありました。これは何かというと、今目をつぶって先ほどの情景を思い出してください。このとき、どこかに焦点をあわせるととたんにぼやける記憶のあいまいさのことです。

このテクニックを使って、拡大縮小すると別のものになるのを恣意的に使えば、独特のゲームができそうです。とはいっても小さいところから大きくなるゲームは、小さいときことを忘れがちなので、アクションであればどんどん小さくなっていき、最初の何気ない敵やイベントが、大きな威力を持って襲い掛かってくるなどはどうでしょうか。

意識は固体以外にも宿りえるかも知れない観点から。それを使って、蜂とかを意識したゲームはできないものでしょうか。RTSのように、機能別に生産されるユニットを使うゲームは、既にいくつかありますが、これはほかのゲームでも流用できるように思えます。

今回は、これくらいで筆をおくことにします。

2008年7月18日

書評:「知られていない原油価格高騰の謎」芥田知至

石油とかの話題も知りたいところ。そんなわけで読みやすそうな本をpick up。

目次

第1章:高騰した原油価格
半年で1.5倍に上がった原油価格
第3次石油危機がやってくるのか?
原油価格は何故ドル建てか?
本当に「最高値」なのか?
第2章:原油を生産する国
石油とは何か?
OPECは復活したのか?
非OPEC産油国の台頭
第3章:原油の輸入国
原油は何に使えるのか?
先進国・新興国の輸入が増加
ハリケーン「カトリーナ」の教訓
第4章:原油市場
原油先物市場とは何か?
原油価格を左右する投機
原油価格高騰の背景とその意味
第5章:世界景気失速懸念とオイルマネーの奔流
原油高で打撃の大きい国はどこか?
日本経済への影響
産油国への資金の流入
第6章:将来の原油価格は上がる?下がる?
原油価格はどこまで上がるか?
石油と環境問題
代替エネルギーの開発

本書の全体像

タイトルが全てを表しています。しかしその本質を見るのではなく、さまざまな視点から捉えていきますので、入門書としては読みやすく充実しています。知っている人は物足りないですね。全254ページ。芥田知至が著者。少し眠くなる内容。

注意しなければいけないのは、これは2006年の本だということ。ご存知の通りここ数年で原油価格は類を見ないほどに高騰しています。本書の予測は原油価格は落ち着くだろう、と占めていたので改訂版も出ています。けれども昔からの流れを知るには十分な内容。

石油=ガソリン、と短絡的に捕らえている人にとっては少しは視野が広がるように書いていますが、広げようとするあまり散漫な内容になっているかも知れません。気になるワードはそれに関連する本を読むことで満足のいくものとなるでしょう。

僕がずっと疑問だったのは、昔よりは所得が上がっているから原油価格が2倍になっても一概に言えないのではないか、です。所属する団体もあり、自分で調べない限りは答えも無かったのですが、本書ではその時の金銭価値と原油価格を比較した体感の表も多く取り入れてます。そこはお勧めの点ですね。

それでは、本書の魅力と所感などを2項目ほど。

最新の問題が反映されないメリット

読んでいく最中に困ったのは、「市場原理により原油価格は落ち着くと思います」、なんでも需要と供給のバランスからそうなって当たり前、と書いているのですが。でもそれでは2007,8年の原油価格の上がりっぷりの説明になりません。じゃあどう理解すればいいの!?

と思うのは至極当然の話です。知識が無いために本を読んで関心を高めようとしているときに、答えがありません。むしろ本書は問題集のようです。だったら自分で調べよう、という程度には関心を持つことが出来るでしょう。

石油を取り巻く環境

これは石油の取れる地質の話ではなく、石油が消費されるまでの経済活動の話です。

先物取引やOPEC、聞いてはいてもいまいち実態が掴めない......守備範囲外の僕はそんなLv1ですが、本書では石油を知る上で必要な程度に事実が書かれています(それが10割正しいかはおいておいて。

大体の場合、本は知りたいから手に取るのですが、それはRSSフィードのように無意識だと好悪だけで判別してしまいます。それでは知らずの内に見えない分野を遠ざけていることになります。そういったときうれしいのはこういったイレギュラー。知らない事も大事だと取り上げている本書には好感が持てます。

本書が合いそうな人

社会に出ていない専門としていない大学生、10代後半にお勧め。この世代は過去の石油様相をオイルショック以上の知識として触れません。主流に関心を持つには十分な内容でしょう。

ただし、図が少なめな上、専門用語が多いのは毎度のことですので、コーヒー片手にがんばってください。

ゲームに使えそうなネタ等

市場原理のシステムはいつも興味深く思えるのですが、ゲームに取り入れるにはアルゴリズムがいまいち難しい......そのまま使っても面白くなるとは限りませんし。

しかしシミュレーションゲームには、石油を取り巻く世界の動きは、定性的に扱いやすいものがあるかもしれません。例えばですが、本書では石油依存度が高い国はこういった風になっている、や、日本がアメリカより石油依存度を低くできるのは狭い国土のためだ。などが書かれています。

世界を見てゲームを作ろうとした場合、先進国や新興国、また先進国の中の差などはなかなか見えてきません。ファイヤーエムブレムなどのゲームでも、国ごとの特徴を主義主張で固めてしまい、実が伴わないことも多くあります。

僕はそういったゲームは薄っぺらい、よく言えばゲームらしい仕上がりになると思うのですが、本書から、国土的にこういった特性を持つ、という至極当然避けにくいパラメータを学ぶことは面白いように思えます。そうすると、情勢が変わったとき、この国はどう動く、などが決めやすいですしね。

2008年7月24日

書評:「ガイアの復讐」ジェームズ・ラブロック

読み物として面白いと思った本は久しぶり。今回は環境と科学。

目次

序章
クリスピン・ティッケル卿
第一章:地球の現状
惑星専門の医師の立場から/前世紀の地球観/必要なのは持続可能な撤退/今使用すべき特効薬とは/ゴドーを待つ余裕はない
第二章:ガイアとは何か
生物も非生物も含めた統合システム/何故われわれは排尿するのか/自己調節する生物圏
ガイアはどのように機能するのか
調節の特性
第三章:ガイアの歴史
酸素の出現/地球の冷房メカニズム
ガイアの老化と死
第四章:二十一世紀の予測
気候変動の予測/北極やグリーンランドの解氷/エアロゾルの冷却作用/地質学的記録/ガイアに好ましい状態
第五章:さまざまなエネルギー源
化石燃料
水素
再生可能エネルギー
原子力エネルギー
エネルギー源のベストミックス
第六章:科学部質、食料、原料
農薬と除草剤
硝酸塩
酸性雨
危険物としての食物
リスクの認識
第七章:持続可能な撤退を意味する技術
改善
理想の食物とライフスタイル
第八章:環境保護主義に対する私見
直感的な感覚と本能/神と創造への直感的な理解/目標すべき適正人口は/人間はガイアの一部
第九章:限界を超えて
秩序正しい持続可能な撤退へ/文明の明かりを点し続けるために/われわれの子孫が生き残っていくためのマニュアル

一部改変

本書の全体像

最初速読で目を通したときはトンデモ本。読むのをやめようと思いました。しかし科学者の立場から見た地球保護は、読み進めるにつれて一貫性を得てきます。全280ページ。2006年初版。著者はジェームス・ラブロック、イギリスの方です。

地球環境の悪化は本当に切迫したものなのか、真の環境保護とはいったい何か、そういったものを環境モデルの結果と、エネルギーのシステムごとの無駄を交えて話を進めていきます。普段とは異なる切り口は極端な考えに聞こえるかもしれません。

本書ではエネルギーの主軸を原子力に頼る、という今日の世論から間違いなく反対される主張をしています。それでは本当に原子力は危ないのか。僕たちは知っているはずです、どう危ないのかは実際のところ映画や漫画の娯楽異常の知識を持ち合わせていないことに。ここは一つ、許容できるに足るだけの主義主張というものを知ってみたほうがいいのではないでしょうか。そこを確りとわきまえている84歳の著者は、何が極であるかの考えを知り、その対極も知る必要があるとしています。

書かれている内容は、著者の考えが前面に押し出されるあまり、珍しく科学者の割に定量的ではなく定性的であることと、推し進める原子力のデメリットを掘り下げていないことがあります。けれどもデメリットについてはいまさら語ることはないのかもしれません。

それでは、本書の魅力と所感などを2項目ほど。

何が原子力の被害者の範疇とされるのか

利権が絡んでいるあまり、今日においてこの前提を知ることはまずかないません。ですからここをどう捕らえるかは置いておくとして、本書ではチェルノブイリ原発事故では、直接的な死者数を75人と表記しています。これも裏づけあっての数字なのですが、それでも、ガンや奇形児は間違いなく増えているはずです。

面白いこととして、マスコミではレントゲンの被爆量何時間分などと換算することがあります。レントゲン100回分の被爆量は10ミリシーベルトなのですが、一体これでどれだけの寿命が縮まるのでしょうか。答えは4日です。さて、レントゲン1回が、一体何ミリ秒照射されるのかは考えずに、この結果からは皆さんの予想をはるかに下回ったのではないでしょうか。恒常的に摂取するタバコのほうがはるかに有害なのです。

たまたま原子力が目に見えないものとして人体に悪影響を及ぼす。死体の姿はおよそ人間の形とは思えない形状に変わる。このような本能的に慣れない現象が人の恐怖を必要以上に増強していやいないでしょうか?本書を読む前から思っていたのですが、現代の先進国ではガンをなによりも恐れます。技術的にそういった障害を乗り越えていく人間はすごいと思えますが、もう少しナチュラルに死を受け入れてもいいように思えます。一つの恐怖を乗り越えれば、太古に火を使おうと思ったときのように、リスクを正しく見積もって実用的に扱えるのではないでしょうか。技術のミスで死ぬのは、火事も被爆も変わらないことに気がついた上で話を進ませることが必要に思えます。

カオス数学から地球を考える

日本で教育を受けた人ならば、地球環境は相互的に支えられていることは言わずとも理解していることでしょう。相互関係があるということは一部の変化が全体に影響を及ぼすことです。

太平洋の海水はすんでいるイメージがあります。反対に北極などの海水は黒く沈んだ色です。あれは海水中に生物がいるかいないかの差です。太平洋の海がすんでいるのは、それが海の砂漠だからです。この海の砂漠は、同時に陸の砂漠と同様の大きな問題として考えるべきです。

さて、いま問題となっている二酸化炭素排出量。いや認知の正確さからすると温暖化でしょうか。この温暖化への対処として、太陽光を地表に到達する前に反射させるという手段があるのはご存知でしょうか。しかしこれには、前段での問題には対処できません。

海の砂漠は、海水の温度と二酸化炭素濃度の影響を強く受けます。二酸化炭素は過去に、海に沈める方向での解決を模索したこともあるのですが、この問題により中止せざるを得なくなりました。海の問題は間違いなく地上にフィードバックを起こすからです。このように、いまや問題は温暖化では留まらずにさまざまな事象が複合的に絡み合っています。何がどう、どの程度のフィードバックを起こすか、それはカオスのように誰も知ることができません。一つ言えることは、人間が介入した改善は必ずどこかでひずみが起きていることです。それを忘れてはいけません。

本書が合いそうな人

今回もまた、入門書として最適です。図がほとんど無いのにもかかわらず最後まで一気に読めるこの系統の本はそう多くはありません。中学生くらいから読める場合もあることでしょう。

また、読み物としても最適です。若干危機感の煽りが大げさなこともありますし、原子力推進派の意見もそうそう触れないために、十分に楽しめる内容でしょう。

ゲームに使えそうなネタ等

スポア!スポア!地球規模のゲームを作るにはこれはまさしくネタ帳です。あちらを立てればこちらが立たず、そういったシステムバランスには実に適当。

エネルギー源をどれに頼るかで、多種多様な特徴を持たせる資料として使えます。

また、地上でしか活動しないのに、実は海水のパラメータが影響を及ぼしていた!なんてノベルゲーム的などんでん返しが、笑えないくらいにその他のゲームにも実用的である事実をむざむざと突きつけられるのは爽快です。これいいかもしれません。

2008年8月19日

書評:「人生を変える美しい勝ち方」桜井章一

自己啓発本ではなく、勝負哲学の本を読んだことはありますか?今回は桜井章一さんの本。タイトルで引いちゃ、ダメよ。

目次

第1章:美しく勝負に勝つ
ホンモノの勝負は、欲や情を超えたものである
勝負において、相手の情報は必要ない
上記他21項
第2章:厳しい勝負に勝つ
相手六分、自分四分の劣勢のときこそ、勝負所
多勢に無勢のケンカ勝負に勝つ
上記他24項
第3章:ホンモノの勝負に選ばれる
骨はあるか?
小指の強さは、美しい
上記他21項

一部改変

本書の全体像

麻雀の勝負師として20年間、裏の代打をしていた桜井章一さんの本です。全190ページ。2007年初版。麻雀で強さを求めた人は一度は耳にしたことがあると思います。僕も一時期燃えていた時にその勝負哲学にのっとって牌を打ち込んでいました。

本書は勝負事の際心がけることは何か、をはじめとして、勝負以前に必要なこと、真に目指すものは、を説いていきます。勝負事をしている人にはうなずけることも多くあると思います。その点では、新しい点以外に再確認用の本として有益でしょう。

しかし勝負事(格闘技などを含む)をなされない方も世の中には多くいます。その場合はよくある自己啓発本と差はないのかもしれません。この本はあくまでも勝負に生きたことがある人へ、これから生きようとしている人へ向けた内容がほとんどです。

勝負は必ず負ける可能性が付きまといます。その時に正しい負け方と、今後も尾を引く負け方があります。尾を引くといえば、ギャンブルで負けを嘆く人ですね。正しく負けるためには、自分の気をいかに持つかが大切になってきます。次に変われるために今回の負けを糧にする考え方は一度触れてみることをお勧めします。

それでは、本書の魅力と所感などを2項目ほど。

連続すること、自然体であること

連続すること、これは本書では今現在自分が生きていて次の瞬間にも保たれていることを上げ、ひいては努力を継続することを説いていきます。例としてあげた門下生は、週に100回麻雀を打ち、それを50週継続することを経て、いい方向に変わっていきます。

自然体であること、これは先入観に惑わされずに柔軟に考えていくことです。無駄にリキんで失敗した経験は誰でもあることかと思いますが、僕の経験からすると、ぼーっとしているように感じられるけれども、他に雑念が沸かない無心のときこそ、集中力が最高に高まっているときであるようです。

以上の二つを踏まえてですが、これらは何かの訓練をするとき、年齢が上がってきてからこそ重要なことだと考えています。よく、幼少期に訓練したものは、成果が短い期間で出てくる他、大人よりも程度の高いところに到達しやすいです。それはもちろん、子供は柔軟だから大人よりはうまくなって当たり前です。では大人がこの子供のようになにかを学習するとき、どうしればいいのでしょうか。

一番良いと考えられるのは、経験や知識を『生かすこと』です。しかし、なかなか成長しない人は、いかせれていません。それは反対に雑念となって学習の妨げとなっています。

僕が提唱する、だれにでも出来てそれなりに成長する方法は、無心で多くの時間をそれに当てることです。桜井さんの上記の2項目に通じるのですが、とりあえず何も考えず、ひたすら毎日やると、成長は間違いなくします。ただし、無心でというのは言い換えれば頭ごなしにそれに時間を費やすということで、大人であればこそ、つい色々と考えてしまうものです。

子供が何故成長できるのかは、若いからだけではありません。考える情報がないから、無心に今やっていることから判断するしかありません。与えられたものだけで考えていくことが一番最初には必要に思えます。広範の知識を生かすのは、基礎が出来てからで決して遅くはないのです。

初級と上級の違い

本書には書かれていませんが、僕の考える大事なことそれは、初級者と上級者はなにが違うのか、です。

初級者はひとつ行動するごとに不利に働き、上級者はひとつ行動するごとに状況を有利に変えていく差です。中級者は行動を不利に働かせない人です。

初級のうちは考えているようで穴だらけです。将棋にしてもそうですが、動かしたばっかりに負けることも多くありません。だから動かすなというわけではないのですが、他のレベルの人に比べてさまざまなものが不足しています。

反対に上級は、場を作り変えていく能力があります。ものを動かすにしても、他の判断より、次に動かしたものが必要とされたとき位置エネルギーが高い状態にあります。この判断力をはじめとする初級者にない力こそ、実践でより必要とされていく対応を適切にこなしていくことが出来ます。

人間生きているだけで、本来なら食うか食われるか、餓死するかのフィールドに身を置いています。先ほどの能力は、ミクロの勝負だけではなく、生きていく勝負にも通じるものです。

本書が合いそうな人

勝負師さん。あと僕みたいに、危なくても突っ込むのが好きな人。せめて無謀とも取れる行動をするときは負けないことに長けなければいいカモです。

仮にまったく役に立たなかったときは190ページ1365円の本書はどうしようもないものです。しかも半分くらいのページは見出しなんだから......(笑

ぶっちゃけた話、この人の他の本を読まれているなら買わないほうがいいです。いいことも言っているのですが、どうも頷けない話についてはその域やオカルト。次のレビューを考えて少しばかり萎えました。

ゲームに使えそうなネタ等

なんだろう、勝負哲学だからどっちかっていえばプレーヤに役に立つものだし。

ねこねこ麻雀みたいなイカサマゲームのイカサマパラメータに使うなら有用。調子に乗っていると痛い目にあうという、実学臭の濃いゲームが作れます。

ノベルゲームだったらキャラクタ作りに役に立ちます。桜井さんは小説から色々と元ネタにされることが多い方なので、いい立ち居地を確保してくれそうです。

2008年8月31日

書評:「酸素のはなし─生物を育んできた期待の謎」三村芳和

酸素のはなし。内容は無機科学3割、有機化学4割、歴史3割。

目次

序章
第一章:山に登るとどうして息が切れるのか
全力疾走する/エベレスト無酸素登頂/高所で暮らす
第二章:酸素がないところでどうやって生きるのか
酸素がないという意味/地下熱水中の細菌群/地球を襲った無酸素事件/酸素を回避する
第三章:酸素元素はどこからやってきたのか
酸素の長いた旅/酸素ガスを放出する/酸素の源─海水/炭素はめぐる
第四章:エネルギーをつくるのに酸素はどういう役割をするのか
酸素でエネルギーをつくる/ミトコンドリアは寄生者/食べてもやせる
第五章:低酸素をどうやって生き抜いたのか
陸だけが生物圏ではない/もっと酸素を/低酸素を感知する
第六章:酸素濃度はどう変わってきたのか
地球初期、ゼロから出発/一気に上昇する/パスツール点に到達循環する旅
第七章:酸素の毒性にどうやって対抗するのか
活性酸素と付き合う/どっと酸素がやってくる/活性酸素を味方につける/活性酸素に対抗する/活性酸素を使いこなす/ネズミチフス菌の抵抗
第八章:酸素は病気にどうかかわるのか
傷が治る/病気に潜む低酸素
第九章:限界を超えて
秩序正しい持続可能な撤退へ/文明の明かりを点し続けるために/われわれの子孫が生き残っていくためのマニュアル

一部改変

本書の全体像

酸素について、多角的に捕らえて話を進めていきます。若干荒削りなところがありますが、ほんのりと心地よい文体です。全228ページ。2007年12月20日初版。著者は三村芳和。

無機的なもの、化学式の話から、がん、医療などの生活にかかわる話、とにかく酸素全般が本書の守備範囲です。その中にももちろん難しい話もあり、読み手によっては苦労するのかもしれません。しかし、科学に関係するものは大なり小なり、理解に手間取るものも胸のすくような事実を学べることが多いので、慣れている人ならまったく問題のない難易度となっています。

本書のいいところは、著者が勤勉であることです。前述したとおり、さまざまなことが書かれているため、さながら酸素の集中講義。そして読み手の経験によって、興味の持てる部分が大きく異なることでしょう。僕はこれぞ『大人の科学』と押したくなる読み物だな、と感じました。大人になってからも科学に興味を持てる、これは間違いなく良書です。

以前、ジェームズ・ラブロックの「ガイアの復讐」を書評しましたが、こちらとあわせて読むと、環境保護の意識向上にも役立つ一品です。

それでは、「ガイアの復讐」とあわせた本書の所感。

今現在生きながらえている偶然

人は今まで長い間生きてきましたが、生きていくための地球上の環境は、実に気まぐれであることを思い知らされます。なぜなら、酸素は少しの差で振る舞いは変貌し、恐ろしいことに過去に何度もその量を変えているからです。

仮に酸素が増えたとします。環境の点では、森林火災の頻度が大幅に変わる、とデータが出ています。しかし、増えたときに人体に与える影響はなかなか耳にすることがありません。減少したときも同様です。本書は、温暖化などで環境が変化したときに、報道の背後でそれ以上の被害を生態系に与えていることを教えてくれます。

まだ手元にありませんが、本書で軽く触れられている『鉄理論』、こちらも読んでみたほうがよさそうです。環境は人の手で変えられる次元を超えていることを感じ、本当のエコロジーとは何なのか、も考えるきっかけになることは間違いないです。

「私の祖父はラクダに乗り、父もラクダに乗り、私はベンツに乗っている。息子はランド・ローバーに乗り、その息子もランド・ローバーに乗るだろうが、さらにその息子はラクダに乗るであろう」

シェイク・ラーシド・ビン・サイード・アル・マクトゥム(Sheikh Rashid bin Saeed Al Maktoum)の言葉より

本書が合いそうな人

大人の科学を学研以外から体感してみたい人。酸素、人体、生態系に興味がある人。

ゲームに使えそうなネタ等

本書全般ですが、得に僕が感じたのは、体内で白血球が病原菌を排除する詳しいプロセスです。ミクロなところで繰り広げられる戦いは、ゲームに置き換えて成功している例はいくつもあります。まだ枯れているようには思えないので、いい素材となるはずです。

2008年10月11日

書評:「戦略的思考の技術」梶井厚志

ゲーム理論を含めた戦略的思考のしかたの入門書。

目次

  • 第1章:戦略
  • 第2章:先読みと均衡
  • 第3章:リスクと不確実性
  • 第4章:インセンティブ
  • 第5章:コミットメント
  • 第6章:ロック・イン
  • 第7章:シグナリング
  • 第8章:スクリーニングと逆選択
  • 第9章:モラル・ハザード
  • 第10章:値引き競争
  • 第11章:オークション

小項目省略

戦略的思考の技術

ゲーム理論は本来の意味から離れて、ゲームのデザインに対しても間違いなく有効に使えるものだと思っています。ただ、日常レベルではどのように使われているかわからない僕にとっては興味を引くタイトルでした。全275ページ。2002年9月初版。梶井厚志著。

本書では最初の方に、知らず知らずのうちに、日常的に戦略的思考を用いているものである、と書いてありましたが、読み進めるとなるほど、確かに日常的に用いています。ただし裏を返せば、本書で取り上げている事象はもともとできていたことが中心で、戦略的思考のプロセスとしてはこのように考えて結論に至るのが妥当である、という道しるべ以上の表現が見受けられません。

また、ゲーム理論を簡単に語るときによく耳にする「囚人のジレンマ」についても、筆者はあえて避けて書いた、とあとがきで語っています。どうにも、よくありがちな本にしたくなかったようです。それが裏目に出てか、あまりにも日常的な話題ばかりで、しかしそれも戦略的思考にのっとるばかりに、現実的に判断できないような答えになりがちでした。僕にはこの本は全体的に不出来なように思えました。

専門用語はせいぜい10程度。数値を出した話も少なく、かつ日常の話題で収まっているために大人なら誰でも苦なく読める内容になっています。本書は戦略的思考の入門書と位置づけるなら悪くはないかもしれません。このとき、マクロ経済、ゲーム理論などをほかの本で読んでいたのなら、本書は簡単すぎる内容だと思われます。

この本の内容を対人関係で実践するのはやめておいたが懸命です。よく文意を捉える、もしくは鵜呑みにしないのであればいいのですが、あまりにもお互いにとって得か、に話を纏めているために、損得勘定に飲まれがちです。

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